ナルシア物語
ここはポポロクロイス城下町。
今日はポカポカいい天気、外を行き交う人々も今日のお天気のようにポカポカあったかい笑顔。
子供達のはじゃぐ声も聞こえてくる、とても平和でのどかな城下町。
そんな城下町のある家では、今日のポカポカ天気には似つかわしくない怒声が飛んでいました。
「ちょっとナルシア!何してんのよ!私の靴みがいておいてって言ったでしょ!?」
キレイな衣装を着た女性が、自分の靴であろう赤い靴を手にやってきた。
今はまるで鬼面のような顔をしているが、笑うととても美しいだろう、と思わせる顔立ちをしていた。
それとは対照的にボロの服を着た女性が荒れた手で床みがきをしていた。
「お、お義姉さん、ごめんなさい、まだこちらのお仕事が終わらなくて…きゃ!?」
義姉のするどい蹴りがナルシアのみぞおちに入った。
「…!!」
息が出来なくなるくらいの衝撃。
ナルシアはそのままその場にうずくまった。
その背中にハイヒールに足を乗せグリグリしながら義姉が言った。
「ナルシア!口答えは許さないよ!?罰として今日は晩御飯抜きだからね!!
ちゃんと靴みがいときなさいよ!?」
「そ、そんな…ジルバお義姉さん…痛ッ!!」
「口答えは許さないって言ったでしょ!?ほんとにあんたってばトロくさいんだからっ!!」
「…ご、ごめんな、さい…い、今やりますから…足を、どけて下さい…痛ッ…ッ!」
背中に乗せた足をグリグリしながらにやりと笑いジルバが言った。
「ふん、最初からちゃんと謝ればいいのに、ま、いいわ、ジルバちゃんてば心が広いから今日は許してあげるわ♪」
と最後に思いっきり足に力を入れて、横腹に蹴りをいれナルシアを吹き飛ばし、自分は笑いながら部屋を出ていった。
バタン!
「……。」
背中に残る痛み…吹き飛ばされ壁にう打ちつけられた痛み…一瞬、息が出来なくなるほどの衝撃。
「…ぐす…お母さんが生きていた頃はこんなことなかったのに…ぐす…。」
そうぼそりとつぶやくと、体中の痛みに耐えながら体を起こしジルバの投げていった靴をみがき始めた。
「…お母さん…どうして私を置いていってしまったの?」
ナルシアの目から涙が零れ落ちる。
涙は頬を伝わり、床に小さなシミを作った…。
ところ変わってポポロクロイス城。
「ピエトロ、お前もいい年だ、そろそろお嫁さん探しをしないとな。」
「結婚なんてまだ考えたことも…。」
「いやーーーーー!!兄様はエレと結婚するのーーーーー!!」
わかってるのかわかってないのか、年の離れた幼い妹が兄であるピエトロの胸に飛びこんで来た。
「エ、エレナ…大丈夫だよ、僕はまだまだ結婚しないよ。」
エレナを抱きとめ、優しく頭をなでてやるピエトロ。
そんな兄妹の姿を微笑ましく見ていながらも、王は
「よし!舞踏会でお嫁さん探しじゃ!」
「ち、父上…そんな無理矢理な…。」
「ダメーーー!!兄様はエレのなのーーーー!!」
ピエトロに抱きついたまま離れようとしないエレナ。
「…困ったな…エレ、大丈夫だよ、僕はどこにも行かないから。」
がっちりとしがみついたまま首をぶんぶんとふり離れようとしない妹と
それを嬉しいような困ったような表情で見ている兄の姿を見て母が助け船を出した。
「エレナ、ピエトロ兄様やみんなで楽しく踊るのよ。」
「おどる…?」
「そうよ、みんなで楽しく踊るの、エレナ最近上手になったものね、兄様に見てもらわなくちゃね。」
「うん!エレ、がんばってるの!兄様見てね!舞踏会楽しみだねっ!!」
サニアがにっこり微笑み、国王が安堵のため息をもらした。
ピエトロは気が重そうだったが、エレナがあまりにも嬉しそうなのでなんとなく自分も嬉しい気持ちになっていた。
それから数日後のポポロクロイス城下町のとある民家…。
バキッ!!
「お母様ーーーっ!!」
「ジルバ、壊したドアはちゃんと直せよ?」
優しくも、その瞳に殺気を潜ませお茶をすすりながら母は言った。
「うん、あとでね!!それよりも見て!これっ!!」
ジルバは持っていた紙を母親に見せた。
「なんだ?」
お茶の入った湯のみをテーブルの上に置き、母は静かにジルバの持っていた紙に目を落とす。
「お城でね!舞踏会があるんですって!しかも、発表されてないけどどうやら王子様のお嫁さん探しらしいのっ!!」
「ドレスを新調しないといかんな…よし、すぐにでも仕立て屋に行ってこよう。」
母親が立ちあがろうとした、が、ジルバをそれを止めた。
「レオナお母様!私、自分で行って来ますわ!だから座ってて下さいな!」
「…いいが、まずはドアを直せよ?…でないと…。」
母親の目がするどく光り、背負っていた弓を構えた。
矢はキラリと光り、その先には踊り狂っているジルバがいた。
うかれまくっていたジルバもさすがに大人しくなり、コクリとうなずいた。
「それと…ドレス新着分のお金はそんなにないからな、作るのは一着分だけだ。」
レオナはテーブルの上にあった湯のみを手に取り、静かにそう言うと再び座って
冷めたお茶に口をつけた。
「ナルシアのは…。」
レオナがナルシアの名前を口にした、その瞬間をジルバを聞き逃さなかった。
「レオナお母様、ナルシアのことはまかせて下さいな、私からちゃんと言っておきますから♪」
「いやそうではなく、ナルシアの分のドレス…。」
レオナの言葉をさえぎりジルバは言葉を続けた。
「たとえ血が繋がってなくてもナルシアは私の可愛い義妹ですもの♪あの娘、いつも
『私はボロでいいの、お義姉さんがきれいなドレス着て。』て言うけど
今回はナルシアだってきれいにしないとね♪大丈夫よ、ドレスだけはたくさんあるから♪じゃあ行って来ます。」
意気揚揚と家を出ようとしたジルバをレナオが止める。
「な、なんですか?お母様…まだ何か…?」
ビクビクしながら母親レオナの顔色をうかがうジルバ。
レオナは何も言わずに、ただ…くいっとドアの方へ顔を向けまたジルバの方をじっと見つめた。
「そ、そうでしたね、先に直さないと…あ、あはは…。」
「私はちょっと出かけるが、帰ってきてまだ直っていないようであれば舞踏会参加はナシだからな。」
「は、はいぃ!!心して直しておきますっ!!」
腕組みをして睨みつけるように見ていたが、ふいに目をそらし
「では行って来る、夜までには戻る。」
そう言うとレオナは家を出ていった。
しばらくその後姿を直立不動で眺めていたジルバが「ふぅ…。」と大きな安堵のため息をついた、そして…。
「ナルシア〜!!」
と、義妹のナルシアを呼び、ドアの修理を言いつけた。
「え…こ、これを私が…。」
「口答えは許さないよ!これをちゃんと直してくれたらあなたに新しいドレスあげるわ♪だからがんばってね♪」
それだけ言うと、ナルシアに背を向けたまま手をひらひらとふり小躍りしながら出ていった。
「…ふぅ…新しいドレス…か…お下がりだろうけど、きれいな服が着れるのならがんばろうっと。」
ため息をつきながらも、嬉しそうにそう言うとナルシアはいそいそと修理を始めた。
仕立て屋…
「また新しい洋服でフか?」
「うん、でも今日はね!きらきらのキレイなドレス作って欲しいの!!」
「豪勢でフね、なんかあったでフか?」
「お城の舞踏会に着て行くの♪玉の輿を狙う為にも、美しく清楚で、それでいてドキっとするような
大胆なデザインで、でもお茶目な可愛らしさも忘れない、そんなドレス!!」
「…あ、相変わらず無茶なこと言いまフね…でも、腕がなるでフ!舞踏会はいつでフ?」
「1週間後よ、それまでに作れる?」
「まかせるでフ!わたヒに出来ないことはないでフ!生涯最高のドレスを作るでフ!」
「ありがと〜♪んじゃ、これ予算ね、これで間に合うように作ってね、足りなくなったらあんたの実費でよろ♪」
「Σ( ̄□ ̄lll)で、でフ!?」
「なぁにぃ〜?このジルバちゃんに文句でもあんのぉ?」
パキパキ指をならし威嚇するジルバ。
「わ、わかったでフ…なるべく予算内にするでフ…(いっつもこうでフ、なんとかして欲しいものでフ…。)」
両手を前に出し、いやいやしながらそう言わざるを得ないデフロボ。。。
あまりのことにぼそりと本音がもれた。
「あぁ!?なんか言ったぁ!?」
ダンボのように耳をでかくしてジルバが聞き耳立てていた。
「な、なんでもないでフ!ぜひジルバ様の為にきらきらのドレス作らせて欲しいでフ!!」
ロボットなのに、冷や汗をかきながら首(どこが首?)をふる。
「それでいいのよ♪私の納得がいくドレス作ってよね?じゃあね、まかせたわよ♪」
嬉しさのあまり店の薄い壁を蹴りで壊しながら出ていくジルバ…。
それを見ながら
「稼ぐために出てきたでフけど…かえってお金かかってる気がするでフ…これが終わったら
国に帰るでフ、もうやってられないでフ…。」
デフロボは泣きながら(どうやって?)注文のドレスを作り始めた。
「あぁ…壁も直さないといけないでフ…予算なんてあってないようなものでフ…。」
いろいろあったけど、舞踏会当日。
「では、拙者たちは寄る所があるので先に行くでござる。」
「お義父様、お母様、いってらっしゃい。」
「ジルバ、遅刻しないように来るのだぞ?」
「はいっ!」
「ナルシア殿…じゃなくてナルシアも遅れないようにするでござるぞ。」
「はい、お父さん。」
「ジルバ、ナルシア、先に城で待ってる。」
「「はい!」」
2人は父と母を見えなくなるまで見送った。
「…さてと…ジルバちゃんもドレス着てお化粧しなきゃ♪」
「…お、お義姉さん、私は…?」
ナルシアが申し訳なさそうにジルバに尋ねる。
「あ、ごっめ〜ん、忘れてた♪私のお古あげるわ、待ってなさいな♪」
いつもとは違う義姉の態度にほっと安心し胸をなでおろすナルシア。
「う、うん…ありがと、お義姉さん…。」
そう言うナルシアににっこりと微笑みかえし「待っててね♪」と言い残し部屋に戻っていった。
ナルシアに背を向けたジルバの目は怪しく光っていた。
「ナルシア〜♪はいっ!これよ♪」
「ありがとう、お義姉さん…え…これは…?」
ジルバが持って来たのはピンク色の可愛いデザインのものだが、ぽつぽつと虫食いの穴が開いていて
ずいぶん長いこと着たものなのか、すそもほつれてボロボロであった。
「お古よ、いいでしょ?」
「え…で、でも…。」
「まっさか、あんたお城の舞踏会に行こうかと思ってんじゃないでしょうね!?
あんたみたいな汚い小娘は恥かくだけなんだから、家でおとなしく掃除でもしてなさいなっ!!」
「…そんな…。」
ジルバが持って来たボロボロの洋服を握り締め、ナルシアはポロポロと涙をこぼして泣き出した。
「それだって直せば着れるでしょ?私が王子様と結婚すればあんたも少しくらいはいい生活させて
あげるわよ、それまで我慢なさいな♪」
「……。」
ナルシアはただ泣くことしか出来なかった。
「じゃ、私は準備するからあんたは私のお気に入りの赤い靴出しておきなさい♪
出かけるまでにキレイにしときなさいよ?わかったっ!?」
泣いてているナルシアに向かって容赦ないジルバ。
顔をあげようとしないナルシアの抱いていた服を奪い取った。
「出来ないんなら、これだってあげないわよ!?するの!しないの!?」
「…わ、わかりました…キレイにしておきます…。」
「最初からそう言えばいいのよ!じゃ、まかせたわよ!」
吐き捨てるように言うと、くるりと降りかえり足取りも軽やかに自室へ戻っていった。
ナルシアは涙をこらえ、ゆっくりと立ち上がり義姉ジルバの靴を磨き始めた。
「…今頃、王子様は誰と踊っているのかしら…。」
庭をはきながらナルシアがつぶやく。
お城の方から風に乗って流れてくる音、華やかな色とりどりの照明が夜空をてらし舞踏会の賑やかさ、華やかさを物語っている。
「…ジルバお義姉さんは王子様と踊ったのかしら…お父さん、お義母さんも踊っているのかしら…。」
何度目かのため息をついた時、庭の枯草が宙に舞った。
「あ…!せっかくはいたのに…!」
風が静かになり、枯草が全て地に落ちた時、そこにいなかったはずの人が立っていた。
「!?ど、どちら様ですか…?」
不審に思いながらもお約束のようにたずねるナルシア。
「あんたも舞踏会、行きたいんだろ?」
その人はぶっきらぼうに聞いてきた。
「え…え、えぇ…でも、私は…。」
悲しそうにうつむくナルシア。
その姿にいらいらしたのか、その人は持っていた杖を一振りした。
「若いんだから素直におなり!ほら、これでドレスはいいだろ?」
「わぁ…!?素敵…。」
ナルシアはあっという間に淡いピンク色のキレイなドレスに身を包んでいた。
「あたしゃ、魔女だからね、これくらいはなんでもないさ。」
「ありがとう!えーと…。」
「森の魔女ギルダさ、まぁそんなことはどうでもいいんだよ、ほら…!」
森の魔女ギルダがそう言い、もう一度杖を振ると…
「…えーと…ちょっと失敗したみたいだね…でもまぁ…問題はないだろ…。」
冷や汗をかきながらギルダがそう言うと、ナルシアはくすりと笑い
「ありがとう…優しい魔女さん…。」
と、お礼を言い馬車…と言うにはあまりにも…だが、ナルシアはそれに乗り込み
お城へと急いだ。
走り出した馬車の後ろ姿にギルダが思い出したように叫んだ。
「12時までだよ!12時になったらあんたは元の汚いかっこに戻っちゃうからねぇ!!
それまでに帰っておいでよ!!」
聞こえたのか聞こえないのか、ナルシアは見えなくなるまで手を振っていた。
「…それにしても…腕がにぶったかねぇ?あれじゃ…馬車じゃなくて荷車だよ…。」
ナルシアの乗ったそれは…
馬車ではなく荷車…人を乗せる為の物ではなく荷物を運ぶ為のあれ…。
そして、馬でなく…背中に大きなぜんまいをつけている変な顔のロボットだった…。
お城の前まで来ると、その怪しいロボットは馬車…もとい荷車を止めた。
「ついたでフ!さぁ行ってくるでフ!でも、12時までには戻ってくるでフよ?
でないとわたヒも動かなくなっちゃうでフ、ゼンマイは12時までしかもたないでフ。」
「背中のぜんまいを巻いたら動くのかしら?」
背中の大きなゼンマイを見ながら不思議そうにたずねる。
「ものフごく堅いでフ、ナルシアさんには無理でフ、どこかの魔王様なら巻けると思うでフけど。
そんなことより時間がもったいないでフ!わたヒはここで待ってるでフ。」
「ありがとう、ロボットさん…。」
ナルシアはロボットにぺこりとお辞儀をし、舞踏会場へ急いだ。
「…楽しんでくるでフよ、ナルシアさん…。
それにしても…どこかのワガママ娘に爪の垢を煎じて飲ませてやりたいくらい
素直で可愛いでフね。。。」
ギルダの魔法で変身(?)したロボットがどこかのワガママ娘をなぜ知っているか?
と言う点はとっぷし〜くれっとです(ぇ?
その頃、舞踏会場では…
「ナルシアも来れば良かったのに。」
お城のメイドさんから差し出されたグラスを手に取りレオナがつぶやく。
「我が娘ながら、質素と言うか恥ずかしがり屋と言うかなんというか…
確かにあまり人が混雑するような所は嫌うでござるが…。」
お酒をすすめるメイドさんに手を遠慮します、と手を振りながらそう答える。
「本当にナルシアは来ないと言ったのか?」
レオナがジルバに尋ねる。
「えぇ『私は苦手だから家で掃除でもしてた方がいいわ、お義姉さん行って来て。』て。」
すらすらと口から出てくるウソ八百。
これほどとは言わなくてもナルシアももう少し饒舌なら…。
「あぁ!それにしても王子様は誰とも踊らないのかしら?
ジルバちゃんの悩殺ダンスでジルバちゃんの虜にしてあげるのにぃ♪…よし!私から誘うわ!」
ジルバがピエトロの側に行こうとしたその時、会場ではどよめきが起こった。
みなが息を飲んで会場入り口に見入っていたのだ。
「あのような素敵な女性と一度でいいから踊ってみたいものだ。」
「女性から見ても素敵だわ…あの方と友達になりたいわ…。」
「いやぁ、うちのもあれくらい美人だったら…痛っ!」
「私だってあと5歳若ければ…でも、本当にキレイ…。」
みなが口々に言う、その先には
淡いピンク色のドレスに身を包んだナルシアが立っていた。
「ンなっ!?なんであの娘がここにっ!?」
驚いたのはジルバだった。
「しかも私より目立つなんて許せないわっ!!」
と、ジルバがナルシアに文句を言ってやろうと近づこうとすると…
「素敵なお嬢さん、僕と踊ってくれませんか?」
それより先にピエトロがナルシアに声をかけていた。
ナルシアは恥ずかしそうにうつむくと小さな声で
「はい…私でよければ…。」
と答え2人手を取り踊り始めた。
「!?な、なな、なんですってぇぇぇええぇ!?」
いつのまにか両親が後ろにいて、その光景を見ていた。
「おや?ナルシアもやっぱり来たのか。」
「おぉ!我が娘ながらなかなか美しいでござるな。」
「親バカだな…白騎士…。」
ほのかに頬を紅潮させたレオナがふてくされたように言った。
ちらりとレオナの方を見たが、すぐに目をそらし…
「…レ、レオナ殿の方がも、もち、もちろんう、うつ、うつうつ、うつく、美しいでござるよ…。」
顔から蒸気を発しながらそう言った。
元々赤かったレオナの顔がより一層赤くなると、持っていたグラスをテーブルの上に置き
白騎士の手を取り踊り出した。
「せ、拙者、ダンスはに、にに、苦手で…。」
「…大丈夫だ…私にまかせろ…。」
レオナが静かにそう言うと、白騎士も静かにうなずき慣れない足取りでステップを踏み始めた。
「…そう、なかなかいいぞ…白騎士…さすがだな。」
「レ、レオナ殿に恥をかかせられないでござるからな…。」
なんだかいい雰囲気になっていた。
いや、そもそも夫婦の設定なんだからいいんだけどね、うん。
「ちょ、ちょっと!なんで私だけっ!!許せないっ!!」
ピエトロ&ナルシア、白騎士&レオナを見ていたジルバが突然叫んだ。
と、
ドガシャーーーーン!!
お城の壁が突然壊され、そこに巨大ロボが立っていた。
「!?な、何事じゃ!?」
王さまを始め、お城の人達みんなが驚き、会場に来ていた街の人達みんなが戸惑い恐れた。
「ガーッハッハッハッハッ!オレ様に内緒でこんな楽しそうなことするなんて…
100000000年(0の数あってます?)はやーーーーーーい!!」
「誰だ!?みんなが楽しんでいるのにこんなことするなんて!!」
ピエトロがいち早く剣を抜き構える。
「ん〜?オレ様に逆らうのか?お前…生意気だな!」
謎の巨大ロボからそう聞こえたかと思ったら、ロボは足をあげピエトロめがけて振り下ろした。
「ピエトロっ!?」
「にーさまーーーーーーーーーっ!!」
「ガーッハッハッハッハッ!オレ様に逆らおうとするから…ぁ、あぁ?」
よく見ると足はかろうじて地面についていなかった。
よくよく見ると、そこには足を抑えて踏ん張っているある人の姿があった。
「ムギギギギ…!!」
「ジルバお義姉さん!?」
「「ジルバっ!?」」
ジルバがピエトロの前に踊り出て、踏み潰される寸前に両手で抑えこんでいたのだっ!
(いや、そもそも人間には無理って言う突っ込みはナシの方向で…d( ̄▽ ̄;)
「…ピ…ピエトロに…私の王子様になんてことすんのよーーーーーーーーっ!!」
怒りゲージMAX!
ジルバは両手に力を入れ、手のひらで抑えていた足を思いっきりぶん投げた。
ドガシャーーーン!!
謎の巨大ロボはバランスをくずして思いっきりひっくり返った。
まるでカメがひっくり返って起き上がれなくなったように、ロボットも動かなくなった。
シュイーン!
もうもうと煙が立ちこめる中、突然ハッチが開いて中から人が出てきた。
いや、ロボットかも?
「こらー!貴様、なんてことするんだ!!スーパーゴージャスエクセレンガミガミロボは
高性能だがひっくりかえったら起きあがれないんだぞー!!」
「そんなこと知るかーっ!!私のピエトロ王子を傷つける者は何人(なんぴと)たりとも許さないんだからっ!!」
と、そこへナルシアも飛び出した。
「ジルバお義姉さん、いくらなんでも無茶よ!早く逃げましょう!」
ナルシアがジルバの手を取り、そこから離れようとする。
「ちょ、ちょっとナルシア!離しなさいっ!私はこんな奴になんて負けないわっ!!」
が、ジルバがナルシアの手をふりほどき、ロボットから出て来た変な奴にくってかかる。
「ジルバお義姉さんにもしものことがあったらお義母さんたちが悲しむわ!わ、私だって…!!」
それでももう一度、ジルバの手を取りそう叫ぶナルシア。
「…ナルシア…私、あんたにすごくいぢわるだったのに…。」
暴れていた手を止め、ジルバがナルシアと向き合う。
考えると、こうしてナルシアと正面から向き合うのは初めてかもしれない。
義父・白騎士と結婚する、と、母・レオナから告白されて内心複雑だったジルバ。
表面では母の結婚を祝福してはいたが、母を取られてしまったような気がしてどうしようもなかった。
このやり場のない怒り、悲しみを義妹のナルシアにぶつけていた。
そうしなければ、自分が壊れてしまいそうだったから…。
「ジルバお義姉さんの気持ちはわかってる…私も…複雑な気持ちだったから…。」
ジルバの心をわかってのことなのか…ナルシアがそうつぶやく。
ナルシアも父・白騎士が結婚すると言ってレオナを連れて来た時、私と同じ思いをしたのかもしれない…。
そう思うと、今まで憎しみの対象でしかなかったナルシアがとてもいとおしく思えたきた。
ナルシアとジルバがみつめあっていると
「こらこらこらこらこらーっ!!オレ様を無視するとは何事だーーーっ!!
ガミガミ魔王様を怒らすと怖いんだぞーーーっっ!!…ん…んん?…んんんっ!?」
自らをガミガミ魔王と名乗った、その怪しげな男は手を取り合っている姉妹を見て驚いた。
「…バカ王子ばかりもてるなんて許さーーーーーーーーーんっ!!
オレ様好みのかわいこちゃんゲーーーーーーット!!…ぽちっとな♪」
わけのわからないことを叫ぶとガミガミ魔王はポケットから何やらスイッチを取り出し
それのボタンを押した。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!
倒れたロボットの頭の部分が外れて、空飛ぶ飛行機に変化した。
「ガーッハッハッハッハッ!!今日のところはこれで見逃してやる!バカ王子!!」
ガミガミ魔王が空へ飛び立ち、捨てセリフを吐いた。
そのかたわらには、ピンク色のドレスを着ている美しい娘の姿があった…。
「ナルシア!?」
「ナルシア殿っ!!」
ピエトロが、白騎士が、レオナがナルシアの名を叫ぶ。
「ナルシアちゃんて言うのか、可愛い名前だ!ナルシアちゃんは今日からオレ様のものだ!!」
最後にそう叫ぶとガミガミ魔王は空の彼方へと飛び去って行った。
「ナルシア…僕、ナルシアを助けに行きますっ!!」
「拙者も参るでござる!」
「私も行くぞ!」
ピエトロ・白騎士・レオナが手を取り合って決意していると…
「あ、あの〜…。」
「今、忙しいでござる!」
「い、いえ、あの、わ、私はここに…。」
「だ〜か〜ら…今、忙し…えぇ!?」
驚いた白騎士が振り向くと、そこには申し訳なさそうにナルシアが立っていた。
「な、ナルシア殿!?え?じゃあ…今、え?…だ、誰…が…?」
「あ、あの…今のはジルバお義姉さん…です…。」
「ジルバ!?」
レオナが驚いてナルシアに掴みかかって聞いた。
「あ、あの、私、森の魔女さんの魔法でキレイなドレス着てたんです…。
12時になったら魔法が解けるから…それまでに帰って来いって言われてたんですけど…
その前にこんなことになって…すっかり忘れていたんです…。」
うつむきながらナルシアが言う。
「それで…ナルシア殿は今ボロボロの服を着ているのでござるな?
で、キレイなドレスを着ていたジルバ殿とナルシア殿を…あのガミガミとう言う奴が
間違えたと言うわけでござるか…。」
白騎士の言葉に、ナルシアが静かにうなずく。
「ナルシア…無事で良かった…。」
ピエトロが嬉しそうにナルシアの手を取り喜んだ。
ナルシアも恥ずかしそうにしていたが、ピエトロがあまりにも嬉しそうなので
思わず顔がほころんでいた。
「ナルシアが無事なのは良かった…しかし、ジルバを助けに行かねばな。」
みんなが忘れていたことをレオナが思い出させるように言った。
しかしその直後、両手を腰にあてやれやれと言った表情でこう付け足した。
「ま、ジルバのことだから大丈夫だろう、むしろガミガミ魔王とかいう奴の方が心配だな。」
その言葉で会場には笑い声が溢れた。
そこへ森の魔女ギルダが現われた。
「だから言ったのに…でも、ま、今回は特別だよ。」
そう言うとギルダはまたしても持っていた杖を一振りした。
すると、ナルシアがまばゆい光りに包まれた。
光りの中から現われたのは、美しいドレスを着飾ったナルシアだった。
レオナの提案で、とりあえず舞踏会をこのまま進め
終わってからジルバを助けに行こう、と言うことになった。
ジルバには申し訳ないが、とレオナは言っていたようだが。
舞踏会はその後滞りなく進み、ピエトロはナルシアにプロポーズした。
後日、結婚式が行われ2人は末永く幸せに暮らしましたとさ…。
「ちょっと待ちなさいよっ!!私はどうなったのよーーーーっ!?」
「そうだー!!オレ様を助けてくれーーーっ!!」
「何言ってんのよっ!元はと言えばあんたが間違えたからでしょーがっ!!」
「紛らわしいピンクのドレスなんか着てるからだっ!!ビンクはナルシアちゃんの色だっ!!」
「なんですってぇぇえ!?」
…ジルバとガミガミ魔王がどうなったか…
それはまた別のお話…。
☆★☆あとがき★☆★
某物語です。
ポポロキャラを知ってるヒトは、笑える?かも?( ̄▽ ̄)?
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