過去と未来の交差する場所
〜僕達だけの秘密の出来事〜



「今日はルナと一緒にマルコの所へ遊びに行くんだ。」

そう言ってピノンはルナの手を取るとまるで空でも飛んでいきそうな勢いでお城をあとにした。
その後姿を、困ったように眺めているピエトロ王と、
その姿を幼い頃のピエトロのようだと微笑んでいるナルシア王妃の姿があった。

「遅くならないうちに帰ってくるのよ。」
そうピノンの後姿に声をかけるも、ピノンはもはや聞こえない所まで走り去っていた。



ピノンの不思議な冒険が誰にも気づかれずに始まろうとしていた。



「ねぇ、ルナ、今日はフローネルの森のギルダさんの所に行ってみようかと思うんだけどどうかな?」
タキネン渓谷に差し掛かった所でピノンがルナにそう尋ねた。

「そうね、結局ギルダさんに会ったことないから会ってみたいかも!」
ルナが嬉しそうに答える。

「マルコは元気かなぁ、レオナおばさんにまた怒られてたりして。」

「マルコなら有り得るわね。」

「「あははははは。」」


楽しそうに笑いながら、もうすぐタキネン村というところまで来た。
何度通ってもやっぱり吊り橋は怖いピノンだけれど、
ここを通らないとフローネルの森に行けない。
ここを通らないとマルコに会えない。
ここを通らないとみんなと遊べない。

そんな思いで、おっかなびっくりだけれどなんとか吊り橋を渡ることが出来た。

「ルナは吊り橋怖くないの?」
なにとはなしにピノンが不思議そうに聞くと、ルナはにっこり微笑んで

「だって、ピノンがいるもの、怖いことなんてないわ。」
と言うと、自分の手を差し出した。
恥ずかしいような、嬉しいような、ちょっと照れくさかったピノンだけれど
ルナに微笑み返すと、差し出されたルナの手を取りタキネン村まで走り出した。









タキネン村からフローネルの森に入り、マルコの家の前まで来ると…

「かぁちゃん!ごめんよ、もうしないよー!!」
マルコの泣きそうな声が聞こえてきた。

「「やっぱり…。」」
ピノンとルナは顔を見合わせて笑った。

コンコン…
「こんにちは、ピノンです、遊びに来ました。」

「おぉ、ピノンか、ちょっと待っていろ、今ドアを開けるからな。」
ドアの向こうで返事をしてくれたのはレオナ・マルコの母だった。

ガチャリ

「おぉ、ルナも一緒か。」

「こんにちは、レオナおばさん!」

ルナが元気よくあいさつする。

「こんにちは、元気そうだな、今日は2人で遊びに来てくれたのか。
マルコのつまみ食いを叱っていたところだが、せっかく来てくれたんだしこれくらいで
許してやることにしよう。」

ルナの頭をなでながらレオナが優しく声をかける。

「遊びに行っていいのか!?かぁちゃん、今日はうちの手伝いしろって…。」
母親のその言葉を聞いて、慌てるマルコ。

「今日は許してやる、その代わり明日は朝から手伝ってもらうぞ。
3人で遊んで来るといい、ただし、遅くならないうちに帰って来いよ。」


「おう!かぁちゃん、さんきゅ〜な。」

それだけ言うと、これ幸いと2人を引っ張り飛び出していった。
その光景をため息をつきながら見ているレオナは、ふとマルコの父親のことを思い出した。

「…やんちゃだが真っ直ぐに成長しているぞ…白騎士…。」
そうつぶやくと、静かに一人家へ戻った。












「なぁなぁ、どこ行くんだ?」

「あのね、ギルダさんに会いに行こうかと思ってるんだ。」

「あの音痴の魔女んとこか?何しに行くんだ?」

「ルナにかけあしの泉を見せたいのと、ギルダさんに久しぶりに会いたいなと思って。」

「オレはなんとなく苦手だぞ…でも、ルナにかけあしの泉は見せたい気がするぞ。」

「そんなにいい所なの?」

2人の会話を聞きながらルナが不思議そうに訊ねる。

「すごくキレイな所なんだよ!」「すごくキレイだぞ!」
2人が同時に力強く答える。

2人はきょとんとして顔を見合わせ、やっぱり同時にルナの方を見た。

「「「あははははは!」」」
思わず笑い出してしまう3人。

「ピノンとマルコがそこまで言うなんて…楽しみだわ。」
ルナが笑いながら言う。

「そうだぞ、きっとルナも気に入ると思うぞ!」

「フローネルの森のかけあしの泉はね、お父さんとお母さんの思い出の場所なんだ。」

ピノンが嬉しそうに言う。

「「思い出?」」
ルナとマルコがその続きを聞きたいと言わんばかりにピノンに訊ねる。

「うん、お父さんがお母さんにプロポーズした場所なんだって。
お母さんはかけあしの泉が大好きで、いつもそこで遊んでたって言ってた。」

「へぇ…そういえば昔オレんちに森の魔女が住んでたって母ちゃん言ってたもんな。
うちからだとすごく近いからいいかもな。」

マルコが思い出したように言うと、驚いたのはルナだった。

「え!?マルコって魔女の子だったの!?」

「なんでそうなるんだよ!オレは母ちゃんの子だ!」

「じゃあ…昔住んでたって言うことは…マルコのお母さん、魔女を追い出しちゃったの!?」

ルナがどこかで聞いたことがあるようなセリフを言った。

「だ〜か〜ら〜なんでそうなるんだよ!かあちゃんはギルダが譲ってくれたって言ってたぞ!」
マルコが地団太を踏みながら叫ぶ。

「…よくわかんないけど…マルコは魔女じゃないってことね。」
ルナにしては珍しく、とぼけたフリをしてマルコをからかっている。

「…オ、オレもよくわかんなくなってきたぞ?もういいや、とにかく行こうぜ!」

自分の言っていることと、ルナが言っていることがごちゃごちゃになって
何がなんだかわからなくなってしまったマルコがさじを投げた。

「そうね、早くかけあしの泉に行ってみたい!ギルダさんに会ってみたい!」
ルナがにっこり微笑んでそう言うと、2人は「うん。」とうなずきかけあしの泉に向かって走り出した。










「ねぇ、まだなの?」
楽しみでしょうがないルナが何度も何度も聞く。

「もうちょっとだよ、そんなに焦らないで。」
ピノンがなだめる。

「ルナもせっかちだな。」
両手を頭の後ろで組み、マルコがあきれて言う。

「だって楽しみなんだもん、早く見たいよぉ。」
照れ隠しのふくれっつらでルナが言う。

「ここを抜けたら泉だよ、ルナ。」
おしゃべりしながらも歩みを止めない3人。
ピノンが前を指差して言う。


並木道を歩いて来た3人の眼前に並木道の最終地点が見えてきた。
並木道の先にはまばゆいばかりの光が広がっていて
ピノンはその光を指差し、ルナの手を取り走り出した。

「ほら!ここがかけあしの泉だよ!」
ルナとつないでいた手を離して、ピノンが両手を広げて力強く言った。

「うわぁ…!」
ルナは瞳をキラキラさせ、両手を組み感嘆の声をあげる。

「すごぉい!すごく小さな海だね!」
手をぶんぶん振りながらピノンとマルコに向かってそう言うルナ。

「ここは海じゃなくて泉だよ。」
と言っているピノンのセリフはどうやらルナには聞こえていないようだ。

喜んでいるルナと、それを見て嬉しそうにしているピノンを見ながらマルコが思い出したように
「ギルダんとこに行ってみようぜ、なんか面白いことしてるといいな。」
と言って歩き出した。

マルコが先導して進んでいる。
よく道に迷うマルコが先に歩いて迷わないのは、一本道だからだろう。
きょろきょろと辺りを見回しながら進むルナ。
足元が見えてないために、よくつまづくのでピノンがルナと手をつないだ。

一際大きな木が見えてきた。
近づくと、そこにはドアらしきものがついていた。

「木の家なの?」
ルナがわくわくしながら訊ねる。

「うん、あれがギルダさんの家だよ。」
ドアを指差しピノンが答える。
そう言うが早いか、マルコがドアをガンガンと叩いていた。
「おーい!遊びに来てやったぞ!あけろー!」

「「マ、マルコ…。」」






「なんだい騒がしいね、昼寝くらいゆっくりさせなよ。」
機嫌の悪そうな声が中から聞こえてきた。

その声にルナが驚き身を正す。
「だ、大丈夫なの?怖くない?」
つないでいたピノンの手をぎゅっと強く握り今までのうきうき気分から一転して
どきどきしながらルナが言う。

そんなルナの手を強く握り返しピノンが優しく微笑む。
「大丈夫だよ、ギルダさんはぶっきらぼうだけどすごく優しい人なんだ。」

「ぶっきらぼうで悪かったね。」

「「「わあぁあぁ!?」」」

3人は飛び上がらんほど驚いた。

いつの間にかギルダが横に立っていたのだ。

「び、びっくりした、さすが魔女だな。」
わかるようなわからないような道理でマルコが納得する。

「こ、こんにちは、ギルダさん、きょ、今日はルナを連れて遊びに来ました。」
どきどきしている胸をおさえながらピノンが挨拶する。

「初めまして!る、ルナです!こんにちは!」

ピノンの言葉に反応してルナも挨拶する。
しかし、こちらはまだ驚きと焦りがあるらしく90度体を曲げ、直角になっていた。

「あぁ、こんにちは、話はピノンとマルコから聞いてるよ、あんたがルナかい。」
先ほどとはうって変わって優しく微笑む…

が!

元が怖い顔をしているので、やっぱりなんとなく怖く、さらに不気味だ。

「笑うとさらに怖いぞ。」
言ってはいけないことをマルコが言った。

「この悪がきが、口だけは達者だね、白騎士そっくりだよ。
ところで、今日は何の用だい?なんかあったのかい?」


「遊びに来たんだ、ルナがギルダさんに会ってみたいって言って本当は会いに来たんだけど
あんなことが起こったから…。」

元気にしゃべっていたピノンの表情が曇る。
『あんなこと』と言うのは、ポポロクロイスのみんなが石になってしまったこと。
月の掟が破られて、ゼフィスが復活したこと、
そして…ルナのお母さんがその身を賭してルナを、世界を守ってくれたこと…。

「でね!今日は天気もいいしマルコと約束してたんだ!
いつかルナをびっくりさせてやろうって!」

うつむいていたピノンが顔をあげ、ありったけの笑顔でそう言った。

「そうかいそうかい…とは言え、うちに来ても何も楽しいものはないよ?」
ギルダが遊べる物は何もない、と言わんばかりにそう言った。

「ギルダさんのとこには面白い本がたくさんあるって聞いて来たんです。」

「私も面白い本見てみたい!」

「本は腹いっぱいにならないぞ〜…。」


それぞれが思い思いのセリフを言う。
マルコはらしいと言えばらしいかも…。

「あんたたちが見て面白い本なんてあるかねぇ?
ま、そんなんでいいなら好きに見て行くといいさ。」

「うん、ありがとう!」

ピノンが元気にお礼を言う、と

「ただし!魔術の本はむやみにいたずらして魔法を唱えたりしちゃいけないよ。でないと…。」

「「「で、でないと…?」」」

どきどきしながら3人がギルダの次の言葉を待つ。

「でないと、大変なことが起こるからね!」
3人に向かって人差し指を立てて言い聞かせようとするギルダ。

「わかった、いたずらはしないよ。」
ピノンが答える。
それにルナがうなずく。

「いたずらしても腹いっぱいにならないからしないぞ。」
マルコが言う。

「…マルコはとにかく腹が減ってるのかい?」
ギルダはうーんと首をひねって考えた。

しばらく考えていたが、ポンと手を叩き
「よし、じゃあ今日はギルダ様特製の料理を食べさせてやるよ!
出来るまで本でも読んでな!」

にこにこしながらそう言った。

「「わぁ!楽しみ!!」」
ピノンとルナは口をそろえてそう言ったが、

「…食えるもの作ってくれるんだろうな…。」
マルコだけは不安がっていた。




ギルダが料理をしている間、3人は本棚をあさってみることにした。

バサバサと本を落としてみたり、取ろうと思った本が取れなくて本棚本体を倒してみたり
一冊取ったら次々と崩れてきたり…ギルダの書斎は本の山でいっぱいになっていた。

ピノンは動物百科と書かれている本を見ていた。
いろんな動物が載っている本で、見たことのある動物、見たことのない不思議な動物なんかが載っていて
ページをめくるたびに感嘆の声をあげていた。

ルナは世界の海、と書いた本を読んでいた。
ルナがいた海のほかにも、海があり、その地域ごとに住んでいる魚や海草なんかが載っていて
それを目をキラキラさせながら見入っていた。

マルコは黒い表紙の怪しげな本が気に入ったようで、本を下に敷きながらそれを熱心に読んでいた。
黒魔術を成功させる方法とか言う怪しいタイトルがついていた…。

「なぁなぁ、これ面白そうだぞ、やってみようぜ。」
3人が3人とも好きな本を読んでいたが、マルコが突然立ち上がりそんなことを言い出した。

「なになに?」
興味津々でピノンがマルコの持っていた本を覗き込んだ。

「…え〜と…くろまじゅつをせいこうさせる…て、マルコそれはやっちゃダメだって
ギルダさんに言われたじゃないか、ダメだよ。」

ピノンがマルコに注意を促す。

「黙ってりゃバレないって、それにオレたちに魔術が出来ると思うか?
かっこだけだって、かっこだけ。」


ピノンもルナも最初はダメだと言っていたが、あまりにもマルコがしつこいのと
自分たちも実はちょっとだけやってみたかったという好奇心が手伝って
いつの間にかやる気満々になっていた。






3人で手をつなぎ輪になり、呪文を唱えると言うものだった。
子供の遊びなんかでありそうな、ありがちなものだった。

マルコが言いだしっぺなので、マルコから本の内容が読めるように地面に本を置いた。

「えーと…………。」

手をつないだままでマルコが呪文を唱えるのを待つピノンとルナ。

「早くしないとギルダさんに見つかっちゃうよ。」
一応、見つかってはいけないとわかっているらしくピノンが言う。

「…やっぱりやめた方がいいんじゃない?」
不安そうにルナが言う。

「なんだよ、怖いのかよ?」
マルコが挑発するかにごとくルナに向って言う。

「そ、そんなことないわよ!それよりもマルコ!もしかして字が読めないんじゃないの?」

「そ、そんなこと…あ、るかも…ピノン、読んでくれ。」

そんなことない、と否定したかったマルコだが、このままではいつまでたっても出来ないので
正直に読めないと告白し、呪文を唱える役をピノンに譲った。

「え?えぇ!?ぼく?」
驚いたのはピノンだった。

やっぱり呪文を唱えると言うことは、怖いことらしい。
が、マルコはそもそも字が読めないようだし、女の子のルナにさせるのもなんだし…
と言うことで、結局ピノンが唱えることになった。

「てゆーか、マルコ字が読めないのによくやる気になったね?」
ピノンが素朴な疑問を投げかけた。

「おう!読める字と読めない字があるんだ。」
えらそうに言う。

「…えばることじゃないわよ…。」
ルナが呆れてため息をつく。

「さぁ、ピノン頼んだぜ!」
話を元に戻し、マルコがピノンに呪文を唱えるようにうながす。

「∂⊆∝∵∀・・・・・・。」
ピノンが呪文を唱え始めた。
何を言っているのか、わからないのは単語になっていないから。
言葉が適当に並んでいるようにしか見えないのだ。

呪文を唱えるごとに、3人の体が青く光っていく。
3人が3人とも後悔の念にかられるも、なぜかピノンは呪文を唱えることをやめなかった。
いや、正確にはやめられなかった。
何か特別な力が働いて、呪文を唱え始めたからには最後まで唱えなければならない何かが
ピノンに呪文を途中でやめることを許さなかった。

ピノンが呪文を唱え終わるのとほぼ同時に部屋のドアが開いた。

「!?何やってんだい!!」
ギルダが叫んだその時にはもうすでに3人の姿はそこから消え失せていた。

そこには持っていたキノコシチューの鍋を落とし、呆然と立ち尽くすギルダの姿しかなかった。




















なんだろう…

ここはどこ?

暗くて何も見えないよ…

真っ暗で何も見えないのに…

でも誰か人がいる…?

とても懐かしい…

とても暖かい…

あなたはだあれ?

ぼく?…ぼくはピノン!

ポポロクロイスの王子だよ。

え?聞こえないよ…もっと大きな声で言ってよ。

あ!待って!

ぼくを置いて行かないで!

お願い!待って!!







「…ン…ピノン!ピノンってば!」

「…あ…ルナ…どうしたの?泣いてるの?」


ピノンが目を覚ますと自分を見下ろして泣いているルナの姿が目に映った。

「な、泣いて…泣いてなんかないもん!ピ、ピノンがなかなか起きないから!
たいくつであくびが出ただけだもん!」

そう言うとプイッと後ろを向いてしまった。

いまいち状況がわからないピノンだけれど、なんとなく心細かったのかな?
ぼくのこと心配してくれたのかな?と思うとなんだかルナがとても可愛らしく見えた。

「ごめんね、ルナ、でもぼくは大丈夫だから心配しないで。」
そう言うと、ルナの手を取りにっこり微笑んだ。

「…そういえば、マルコは?」
マルコがいないことにピノンが気がついた。

その言葉にルナがうつむいて答える。
「わかんないの…目が覚めたらここにいて、マルコがいなくて…ピ、ピノンがなかなか
目を…目を覚まさなくて…そ、それで…わ、私、どうしていいのか…。」


涙をこらえて一生懸命話すルナに「不安にさせてごめんね、ルナ。」とだけ言うと
ピノンはすくっと立ち上がり辺りを見回した。

「…ここは…フローネルの森…だよね?ギルダさんのとこにいたはずなのに…
あの魔術の本でいたずらしたから吹き飛ばされたのかな?だとしたら、マルコもどこかにいるはず…。」

ルナを不安にさせてはいけない、と言う気持ちでいっぱいのピノン。
自分も何が起こったのかわからなくて不安なのだが、ぼくがしっかりしなきゃ!
と言う思いがピノンを気丈に振舞わせていた。

「とにかく、ギルダさんのとこに戻って謝らなきゃね。」
まだ座り込んでいるルナに手を差し延べピノンが笑顔で言う。

「う、うん、でもマルコは…?」
ピノンの手を取りゆっくり立ち上がりながらルナがつぶやく。

「マルコのことも心配だけど、少しくらいならマルコは大丈夫だと思うんだ。
ぼくたちがふざけてやったことに対してまずはギルダさんに謝って、それからマルコを
一緒に探してもらったほうが早いと思うんだ。」

ピノンにしては珍しく力強く言う。

「そ、そうね、まずはギルダさんにちゃんと謝らないとね。」

「えーと…ここからだと…かけあしの泉はこっちの方だ。」

ピノンはルナの手を取り歩き出した。









「ねぇ、確かにフローネルの森なんだけど…でもなんだか雰囲気が違ってるような気がするんだけど…?」
キョロキョロ見回しながらルナが言う。

「…ルナは何度も来た事がないのにそう思ってことは…ぼくが思っていることも間違いじゃないってことかな…。」
ピノンがルナの手を引きながら振り向きもせずそう答える。

「ここは確かにフローネルの森だと思うんだけど…でもルナの言うとおり何かが違う気がするんだよね…
でも、それがなんだかわからないんだ…とにかく何か起こったのかもしれないから早くギルダさんのとこに…。」

ピノンがそう言い掛けると、どこからか歌声が聞こえてきた。

「…キレイな歌声…誰かしら?ギルダさん?」

「いや、ギルダさんじゃないと思う…。」

ピノンが即否定した。

最初にかけあしの泉に出てきた時のように、並木道を歩いていると前方から光が差してきた。
道が開けたのである。

並木道を抜けるとそこにはかけあしの泉が
そして、その泉の真ん中で少女が歌を歌っていた。

「だれ!?」

「あ、ぁの、ごめんなさい、友達とはぐれちゃって…それとギルダさんに会いに行こうと思って…。」

ピノンが頭をかきながら少女にそう答える。

「ギルダ姉さんに?ならこっちじゃないわよ?」

「え?姉さん?ギルダさんの妹さんなんですか?あれ、ギルダさんの家ってこっちじゃ…?」

「うふふ、迷ったのね。
いいわ、連れて行ってあげる、こっちよ、ついて来て。」

その少女はくすりと笑うと、ピノンとルナについて来るようにうながした。



歩きながら、少女は自己紹介してくれた。

「私はナルシア、森の魔女ギルダは私の姉なの。」

「「えぇ!?な、ナルシア!?」」

思わず2人同時に叫んでいた。
2人は飛び上がらんほど驚いた。

「え、えぇ…そんなに驚くことだったかしら?
まだまだ未熟だけれど、私も森の魔女なの。」

自分をナルシアだと言う少女はくったくのない笑顔でそう答える。

「えとえと…し、知り合いにそんな名前の人がいたから…。」
直感でここは正直に言わない方がいいと悟ったピノンがなんとか答える。

(ナルシアさんて…ピノンのお母さんの名前じゃない?)
(うん…確かに肖像画で見たのとそっくりなんだよね…。)
(じゃあ…やっぱりナルシアさん?でも…???)

「どうしたの?」

ピノンとルナがひそひそと話しているが気になってか、ナルシアが声をかけた。

「い、ぃえ、なんでもないんです!あ、あの、わ、私はルナって言います。」
ルナが話をそらそうと自己紹介する。
ピノンがそれにならった。
「ぼくはピノン…えっと、ギルダさんのとこに行く途中で友達とはぐれちゃったんです。」

「お友達を探しているうちに迷っちゃったのね。
森にいたずらされないように姉さんが魔法をかけているからたまに迷う人もいるの。」


歩きながらそんな他愛もない話をしていた。

「さぁ、ついたわ。」

「…こ、ここがギルダさんの家…。」


ナルシアが指し示す先には…ピノンとルナが知る限りではマルコの家があった。
2人は口をあんぐりとあけたまま、立ち尽くしてしまった。

ナルシアにうながされ正気に戻った2人がドアを開けて家の中へ入ると

「よぉ、ピノンにルナ、遅かったな。」

なぜかマルコがいた。

「「ま、マルコ!?」」

マルコはすっかりくつろいでいて、しっかりとお茶とお茶菓子を食べていた。

「な、なんで!?そんなことよりもマルコ!!」

ピノンとルナはお菓子をほおばっているマルコを部屋の隅まで引っ張っていった。

(マルコは知ってるの?ここがどういうところか。)

(…オレは気がついたらここにいたんだよ、そしたらギルダが出てきてよ…。)



マルコの話を要約するとd( ̄▽ ̄)

マルコも吹き飛ばされた衝撃でしばらく気を失っていたが、ギルダにつつかれて起こされた。
なんたってマルコはギルダの家−今は…というかぼくたちの世界ではマルコの家なんだけど−にいたからね。
そして、少しずつ何かが食い違っていることに気がついたマルコがギルダに問い詰めた。

ら、

ギルダは理解して、マルコにこう説明してくれた。

「あんたたちからするとここは過去の世界だ、あんたたちがいたずらした本が時空を越える魔術が
書いてあったんだろう。
そしてうまい具合に発動しちまって過去の世界に飛んで来たってわけだ。
未来の世界…と言ってもあんたらには自分たちの世界なんだが、そこに帰りたいんだろ?
過去に行く魔術があれば、元の世界に帰る魔術もあるはずさ。

しかし!!

その本が今どこにあるかはあたしにだってわからないよ。
黒魔術なんとかって書いてあったって?
そういや、そんな本もあったかねぇ…?
さてさて…探しだすだけで時間がかかるよ。
帰してやる方法はその本を見つけ出さないとわからないが
たぶん書いてあるだろう。
それまではどうしようもないね、適当に遊んでな。」


最初は一緒に探せ、と言っていたらしいが
一緒に探していたら、本は落とすは、本にけつまづいて転ぶは、本棚はひっくり返すはで
かえって時間がかかるから、そっちで遊んでろ、と言われたらしい。
それに、また同じことされてまた変な世界に飛んでったりしても困るからと
つけたして言われたとか。

信用ないな…。
まぁ…確かにやっちゃったしね。


(とにかくしょうがないよ、ギルダが本を見つけ出すまではここにいるしかないんだし。)

(…そ、そうだね…なんとなくわかったけど、やっぱり目の前にいるのが自分の若かりし頃の
お母さんだって言うのが…こうなんていうか…恥ずかしいよね?)

(てぇことは…どこかにオレのかぁちゃんもいるんだな?)

(そういうことだね。)

「なぁなぁ、外に遊びに行ってもいいか?」

マルコが何かを思いついたらしく本を探しているギルダに声をかけた。

「なんか変なこと考えてるんじゃないだろうね?」
ギルダがマルコを睨みつけながら言う、が

「ま、いいだろ、ナルシア、この3人だけじゃ心配だからあんたもついていってやんな。
晩御飯までには帰ってきなよ。」

と言った。

「ねぇねぇ、ぼくお城を見てみたいなぁ。」
ピノンがわくわくしながら言う。

「それいいな、オレも見たみたいぞ。」
マルコが賛同し、ルナが頷く。

「じゃあ、お城見学に行きましょうか。」
何も知らないナルシアが、3人を連れて一路、お城へと向かい歩き始めた。

本の山の中にうずもれていたギルダがひょこっと顔を出し
「それにしても…親子そろって無茶なことするもんだね。」
と、つぶやき再び本の中へうずもれていった。







ナルシアに連れられてポポロクロイス平原までやってきた。

ルナが思い出したようにナルシアに尋ねた。

「ナルシアさんて今いくつなんですか?」

「え?私は12歳よ、どうして?」

「い、ぃえ、私たちとそんなに変わらないように見えるのに
すごくしっかりしてるように見えたから…。」

ルナがしどろもどろに返答する。

(12歳…お父さんが知恵の王冠を取りに行く試練を受けた年だ。)










☆★☆こつぶの戯言★☆★

書きあげたいのに、書き上げられない…orz
読んでいる人がいたら…気長に待ってくさい…。



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