ナルシア姫と3人の子供たち


ある所にフローネルと言う国がありました。


その国のお姫様はとても可愛らしいお姫様で
国中の民から慕われ、愛されているお姫様でした。

そんなある日、母親である王妃様が病気で亡くなってしまいました。

お姫様は一晩中泣き続けました。
月日がたってもいっこうに元の明るいお姫様に戻らないことをなげいた王様−父親−は
「やはり母親がいなくては…!」と思い後妻をもらうことにしました。


「ナルシアよ、これからはこの者を本当の母と慕い仲良く暮らそうぞ。」
王である父がそう言い連れて来たのは…

「今日から私があなたのお母様になる『ジルバ』よ♪よろしくね♪」
新しいお母様はとてもはじけた方のようでした。

「よ、よろしくお願いします、お義母さま…。」
正直、ナルシアは(ちょっと苦手なタイプかも…。)と思いました。

はじけた感じの母、ジルバは『美』に関してはとてもうるさい人でした。
自分の部屋には、全身がうつる大きな鏡、
お化粧道具は当たり前のように鏡台に入りきらないほどいっぱい、
キラキラと美しいドレスも数え切れないほどあるにも関わらず
王様にねだってはどんどん新しいドレスを買っておりました。

それでもナルシアのおかげで、なんとか(表面上は)うまく行っているようでした。






「これが魔法の鏡?」

「そうだ、これが美しいモノしか映さない魔法の鏡だ。」

ある時期から、ジルバ王妃は怪しげな風貌の親父と闇取り引きをするようになりました。
怪しさ大爆発のその親父は自らを『(自称)大発明家』と呼んでいました。

ベッドに寝たまま着替えさせてくれるカラクリ機械を持ってきたり
(ベッドに寝たまま、顔を洗ってくれるのでびしょびしょになって結局二度手間に。)

寒い冬はこれ一つで!と言って暖かいフトン付のテーブル(コタツ)を持ってきたり
(そのまま寝ていたら脱水症状を起こして死に掛けたり。)

食事のあとはこれで楽々♪な自動食器洗いカラクリなんかを持ってきたりしていました。
(むしろ汚れが落ちなくて食器が使い物にならなくなったり。)

とまあ、たいした発明…というか、はた迷惑な発明品を持って来ては
言葉巧みにだましこんで、高値で買い取らせておりました。
それに気がつかないジルバ王妃さまにも問題があるのですが。。。

そんな(自称)発明家がある日持ってきた怪しげな鏡。
まずはうたがってかかるジルバ王妃。

「…今までのは全部失敗しておろうが?大丈夫なのかぁ?」
ものすごく信頼してません!と言わんばかりの言い草です。

それに対して、ものすごく勝ち誇ったように話し出す(自称)発明家。

「ガーハハハハっ!!今度こそ大丈夫だ!!オレさま超天才だからな!試しに自分を映してみろー!!」

あまりにも自信ありげに言う(自称)発明家にちょっと期待してジルバ王妃は鏡に自分の姿を映しました。

そこには…どの鏡にも同じく映る自分の姿がありました。
が、特別何かがあるわけではなく、まさに普通の鏡なのでなんだかとても不満でした。

「…別に普通の鏡じゃないのよ?」
ジルバ王妃が面白くなさそうに言うと(自称)発明家は手を腰にあて「ちっちっち〜♪」と舌打ちして
偉そうにこう言いました。

「鏡よ、鏡よ、鏡さん、この世で一番美しいのは誰?と聞いてみろ。」

「え?えぇ、鏡よ、鏡よ、鏡さん、この世で一番美しいのはだぁれ?」
変なことさせるわね?と思いながらも何かを期待してそう鏡に話かけるジルバ王妃。

すると…

「この世で一番うつくヒいのは、ジルバ王妃さまでフ。」

なんとなんと!?
鏡が答えたではないですかっ!!

「ガーハハハハっ!どうだ!?オレさまの発明は!?」

「さいっっっこうだわ!!ぜひ、買わせていただくわっ!!」

「まいどあり〜♪」

こうしてジルバ王妃さまは、この不思議な鏡を購入することになりました。

それからというもの、毎日鏡に自分の姿を映しては「この世で一番うつくヒいのは、ジルバ王妃さまでフ。」
と言わせ、幸せに酔いしれておりました。









そんなこんなで幼かったナルシア姫も大きくなり、可愛いお姫様から美しい姫に変わった頃その事件は起きました。

いつものように新しいドレスに着飾ってジルバ王妃が鏡の前に立ちました。
そして、やはりいつものように鏡に向ってたずねたのです。

「鏡よ、鏡、この世で一番美しいのはだ・あ・れ?」

ジルバ王妃はもちろん「ジルバさまでフ。」と言われるものと思っていたし、
そのつもりで鏡にたずねていました。

しかし…

「この世で一番美しいのは…ナルシア姫さまでフ。」

鏡が初めて自分以外の人物の名前を言いました。
それにたいそう腹を立てたジルバ王妃さまは、何度も何度も鏡に聞き返しますが
どんなに聞き返しても

「最近、とてもキレイになったでフ、ナルシア姫さまキレイでフ。」

「やっぱり若い娘の方がいいでフよ、ナルシア姫さまが一番でフ。」

「優しくて可愛くて美しくて、完璧でフ、ナルシア姫さまがこの世で一番でフ。」

としか言いません。

あまりの腹立たしさにジルバ王妃さまは鏡に向って超デカイ本を投げつけて割ってしまいました。

「で…でフ〜…。」

壊れた鏡はもう何も映し出すことはありませんでした。

「それにしても超ムカツクわ、あのアマ!!…そうだわ…ウフフフフフ♪」

怪しげな笑みを浮かべると、ジルバ王妃さまは召使いを一人自室へ呼び出しました。

「王妃さま、何か?」

「お前に頼みがあるのよ。」

「はい、王妃さまのお言いつけであれば何なりと…。」

それを聞いた王妃さまは『にやり』と不気味な笑みをこぼしましたが、弓使いの彼女は
それに気がつきませんでした。

「ナルシア姫を森に連れて行って殺しておしまい!」

「え、えぇ!?そ、そんなこと…。」
弓使いがオロオロしていると、ジルバ王妃さまは言いました。

「お前は今『王妃さまのお言いつけであれば何なりと。』と申したではないか?
あれは間違いだったのかえ?」

「い、ぃえ…しかし、そんな、ナルシア姫さまを…こ、ここ殺すなんて…。」

弓使いが返答に困りオロオロしていると、ジルバ王妃さまは弓使いにそっと耳打ちしました。

「ナルシアを殺ったら、あんたの愛しい白騎士を馬の世話係りから騎士団長に出世させてやってもいいわよ?」

「え!?…そ、それは…し、しかし…。」

「出世しちゃえば将来安泰じゃないの?今のまま馬の世話係なんてしてたら
あんた将来苦労するわよ〜?」

その一言で弓使い・レオナは決心せざるを得ませんでした。









「ナルシア姫さま、ご一緒に森に散歩なぞいかがでしょう?」
レオナがナルシア姫を森に誘いました。

ナルシア姫は疑いもせず、快く返事をしてレオナと共に出かけて行くことにしました。


ジルバ王妃さまはと言うと…
レオナとナルシア姫が出かけていくのを自室の窓から眺めて、一人ほくそえんでいました。




かけあしの泉まで来ると、ナルシア姫がレオナに問いかけました。

「レオナさん、何か悩んでいることがおありなのではないですか?」

ナルシア姫は城を出てくる時から、レオナの様子がおかしいことに気がついていました。

「な、ナルシア姫さま!!申し訳ございません!!」

見透かされてしまったという思いと、やはり心優しい姫を殺すことは出来ないとレオナは
ジルバ王妃さまに言われたことをナシルア姫に全て話しました。

「そんな…ジルバお義母さまが…。」

「…白騎士を出世させてやると言われて…その時はつい…
ナルシア姫さま!どうかお逃げください!あとは私がなんとかごまかしておきます!」

「で、でも…。」

「このままお城に帰れば、またいつジルバ王妃さまがナルシア姫さまのお命を
狙うかわかりません!ならば、私がお城へ戻り言われた通り姫さまを殺して来たと
お伝えすればお気が晴れることと思います!」

「…わかりました…レオナさん…もう会えないかもしれませんが白騎士さんとお幸せに…。」

ナルシア姫はそう言うと、首から下げていた黄金の鍵のネックレスをレオナに渡しました。

「これは…?」

レオナが黄金の鍵をナルシア姫から受け取ると、不思議そうに尋ねました。

「これをジルバお義母さまに渡せばきっと私は死んだと思うことでしょう。」

「そ、そんな、これはナルシア姫さまの大事な…!」

「あなたの為になるのでしたら、これくらいなんともありません。
それよりも、私は死んだと必ず伝えるのですよ?」

ナルシア姫はレオナの手をそっと握るとにっこり微笑んでそう言いました。

「…は、はい!ありがとうございます!!」

レオナはナルシア姫の手を強く握り返し、涙を流してお礼を言いました。






「では、ナルシア姫…お達者で…。」

「えぇ、レオナさんも白騎士さんとお幸せにね。」

ナルシア姫は最後まで微笑んだままでそう言いました。

レオナは心が締め付けられるほどつらかったのですが、
ナルシア姫がくれた黄金の鍵を持ってお城へ戻りました。





「おーほっほっほっほっ!これで世界で一番美しいのはこのジルバちゃんよ〜♪」

ナルシア姫の黄金の鍵を受け取ったジルバ王妃さまは、レオナがしっかりとナルシアをしとめたものだと
信じて疑いませんでした。

そして、約束通り白騎士は馬の世話係りから騎士団長に出世することが出来ました。



「それにしても…つい怒りにまかせて鏡を割ってしまったわ…
またあのガミガミ親父来ないかしら…そしたら直してもらうのに…。」

ジルバ王妃さまは今更、鏡を割ってしまったことを後悔していました。












一方、ナルシア姫は…。

フローネルの国を出て、いくあてもなく森をさまよっておりました。

レオナに殺されなかったとは言え、このままでは疲労と飢えで倒れてしまいます。
そうなれば、結局はジルバ王妃さまの思惑通りということになってしまいます。



そこがうまくいかないのがこのお話だったりします。




「こんな所にこんな可愛らしい家があるなんて…どなたかいらっしゃらないかしら?」

ナルシア姫は森の奥で、小さな家を見つけました。

疲労と空腹で倒れそうだったナルシア姫は、迷うことなくその家のドアをノックしました。

「どなたかいらっしゃいませんか?少し休ませていただきたいのですが。」

「は〜い、どちらさま〜?」

ドアをノックするとちょっと気の抜けた男の子の声が聞こえてきました。

「あの…私、森で迷ってしまって…お腹がすいてしまったんです、何か食べるものいただけませんか?」

ナルシア姫がそう言うと、ドアが開いた。

「それは大変!早く入って!」

出てきたのはとても可愛らしい小さな男の子でした。

その後ろには、もう一人ガキ大将っぽい男の子と、可愛い女の子がいました。




「とてもおいしかったわ、ありがとう…えーと…?」

お腹いっぱいになったナルシア姫が男の子にお礼を言おうとしましたが、名前を聞いていないことに気がつきました。

「ぼく、ピノンです、よろしく。」

ドアを開けてくれた男の子が元気に自分の名前を言いました。

「オレさま、マルコだぞ、よろしくな。」

ガキ大将っぽい男の子はマルコと言う名前のようです。

「わたしはルナ、よろしくね。」

可愛らしい女の子はルナと言うようです。

「ピノン、マルコ、ルナ、ありがとう、私はナルシア、フローネル国の姫…でした…。」

「えぇ!?お姫様がなんでこんなところにいるの?」

「お姫様ってのはお城でごちそういっぱい食べてるんじゃないのか!?」

「もしかしていぢわるな継母がいて家出して来たとか!?」

なんだかみんな好き勝手なことを言っていますが、ルナの言っていることが
微妙に違うけれど一番近いようです。

ナルシア姫はとても素直なので、今までのことを全て3人にしっかりと話して聞かせてくれました。

3人はたいそう驚き、そして行くあてのないナルシア姫に「一緒に森で暮らしましょう。」と
提案しました。

ナルシア姫は最初は迷惑かけるかもしれないし、と断りましたが
あまりにも熱心に誘ってくれるのと、結局行くあてがないのとで
3人の行為に甘えることにしました。

こうして森の3人の小人…じゃなくて子供たちとナルシア姫との貧しくとも、楽しい日々が始まりました。












それから一ヶ月ほど経ったフローネルの国のお城では…


「ガミガミ親父、久しぶりね、私あの鏡壊しちゃったのよ、直して♪」

「なんだとー!?これだから乱暴な女は…ぶつぶつ…。」

「あ?なんか言った?」

「なんでもない、仕方ない今度は壊すなよ!?」

「もっちろん♪」

そう言ってガミガミ親父は壊れた鏡の修理に取り掛かりました。


修理にはそんなに時間はかかりませんでした。


「よし、これでいい、おい、もう壊すなよ?」

「ありがと〜ん♪お礼はいつものように振り込んでおくからもう帰っていいわよ♪」

「けーっ!用が済んだらこれかよ!?ま、いい、オレさまも暇じゃないからな。」

鏡を直したガミガミ親父は、修理代金の振り込みに念を押してお城をあとにしました。

鏡が直って小躍りしていたジルバ王妃さまは、早速新着ドレスに着替え鏡に映し久しぶりに
尋ねてみました。

「鏡よ、鏡よ、鏡さん♪この世で一番美しいのはジルバちゃんよね〜♪」

「でフ…この世で一番美しいのは…。」

「美しいのは?(どきどきわくわく)」

「一番美しいのは、フローネルの森のかけあヒの泉のもっと奥深くで
つつましく暮らしているナルシア姫さまでフ!!」

「ぬぁぁぁぁんですってぇぇえぇぇ!?こんのくされ鏡がぁあぁぁ!!!」

ガシャーン!!!

「…で、で…でフ…。」

直してもらったばかりの魔法の鏡はあっという間に壊されてしまいました。

「レオナをお呼び!!」

王妃さまはレオナを呼んでくるようにいいつけましたが、レオナは昨日付けで暇をもらっており
どこにもいませんでした。

仕方ないので白騎士をと思ったのですが、どうやら白騎士も一緒に暇を貰っていたようでした。

「ちっ!!逃げたわね!?」

ジルバ王妃さまは舌打ちして悔しがりました。

「なら…このジルバちゃんが直々に引導を渡してあげるわぁ!!ホーッホッホッホッホッ!!」

ジルバ王妃さまの高らかな笑い声きがお城中に響き渡りました。











フローネルの森の奥深くでは、3人の子供たちとナルシア姫が
のんびりとその日暮らしをしていました。

そんなある日の出来事です。

「あれぇ?食べ物が減ってる…?これじゃ今日の分も足りないよ。」

ピノンが食料箱をのぞいて不思議そうにそう言うと、ルナが即座に反応しました。

「なんですってぇ!?マ〜ル〜コ〜?」

マルコがビクリと体を硬直させて、静かにルナの方を向くと…

「ひいぃいぃぃぃ!!??ご、ごめんよー!!」

ルナの美しい青色の髪が逆立ち、鬼の形相でマルコを睨んでいました。

「やっぱり…ちゃんと計画して集めてるんだからつまみ食いしちゃダメじゃない!
仕方ないわね…食料探しに行くわよ!」

ルナがマルコを引っ張りながら出かけて行きました。

「あ、待って、ぼくも行くよ!」

ピノンが慌ててルナたちのあとを追いかけて行きました。

「じゃあ、私は残った食料で何か作って待ってるわね。」

ナルシア姫が3人の後姿にそう声をかけて、見えなくなるまで手を振っていました。



「さてと…何を作ろうかしら?」

ナルシア姫は早速、お料理に取り掛かり始めました。

「残っているのは…妖精のリンゴ・ポポロイモ・フローネルカロットにトンガリオニオン…。
あとは…お肉がちょっぴり…と、よし、今日はナルシア特製シチューにしましょう♪」

メインはシチューで、デザートはリンゴのようです。

3人の子供たちの家からはとてもいい香りがしてきました。



と、そこへ…。

「こんにちは、可愛いお嬢さん、オレンジはいらんかね?」

と、いかにも怪しい老婆の姿をした物売りがやって来ました。

「今日の分のデザートは足りてるので遠慮いたしますわ。」

ナルシア姫は丁寧に、でもスパッと断りました。

「そんなこと言わずに…あたしゃこれを売ってしまわないと家に入れてもらえないんだよ。
優しそうなお嬢さん、どうかあたしを助けると思って1個でいいから勝ってくれよ。」

そう言うと老婆としくしくと泣き出してしまいました。

それを聞いた心優しいナルシア姫は、たいそう哀れんで買ってあげようとしました。

が、

お金を持っていないことに気がつきました。

「あぁ、あんたのその気持ちで十分あたしは癒されたよ…
今日は特別に一つだけタダであげるから…今度はちゃんと買っておくれよ。」

そう言うと、老婆は泣きながら一番おいしそうなオレンジをくれました。

「ありがとう、おばあさん、気をつけて帰ってね。」

ナルシア姫は、おばあさんが不気味な笑みをこぼしているのに気がつきませんでした。



オレンジのいい香りがしています。

いつもなら3人が帰ってくるまで待つのですが、今日はどういうわけか
どうしてもこのオレンジが食べたくて仕方ありませんでした。

「ちょっとだけ…。」

オレンジをちょっとだけ切り取って、ナルシア姫はそれを口に含みました。

「あぁ!!こ、これは…!?」

ナシルア姫が突然叫びました。

「なんておいしいのかしら!ピノン、ルナ、マルコにも食べさせてあげなくちゃ!」

オレンジはとてもおいしかったらしく、ナルシア姫はたいそう喜びました。

喜んでいたのもつかの間、ナルシア姫は静かにその場に倒れてしまいました。




「なんて鈍感な娘だろう…でも、どうやら毒が効いたようだね。」
物陰からのぞいていた先ほどの老婆が、ナルシア姫が倒れたのを確認して不気味に笑っていました。

その老婆がおもむろに着ていた小汚いローブを脱ぎ捨てました。

なんと!

老婆は変装したジルバ王妃さまでした!

「これでこの世で一番美しいのはこのジルバちゃんね!!あとは年取った老王をどうにかして
若い素敵な王子様を捕まえて幸せに暮らさなくちゃ♪」

そう言うと、ジルバ王妃さまはルンルンとスキップしながらお城へ戻りました。




「「「ナルシア姫!?」」」

3人の子供たちが食料調達から帰ってきた時には、ナルシア姫はすでに冷たくなっていました…。










3人の子供たちは考えました。

「かけあしの泉の近くに埋めてあげよう。」


子供たちは、お姫さまがいつでも泉を眺められるようにガラスの棺を作りました。

ガラスの棺にお姫さまを入れ、周りは綺麗な花でいっぱいにしてあげました。

そして、それをかけあしの泉まで運び、一番見晴らしのいいところに置きました。


「うわーん!お姫さま返事してよー!!」

「それはムリよ、ピノン。」

「(ルナ…冷静すぎじゃ…。)」

それぞれの思いを胸に秘め、お姫さまを埋めてあげようと穴を掘り始めました。


ザクッ

ザクッ

ザクッ


「君たち、こんなところで何をしているの?」

白馬に乗った…?























白馬に乗ってはいませんでした。

「ガボ!」と鳴く不思議な生物に乗った、見た目王子さまらしき人が声をかけてきました。

「お姫さまが死んじゃったんだ!えぇーん!!」

今まで涙を我慢していたピノンが大きな声で泣き出してしまいました。

「ピ、ピノン、そんなに泣いちゃ…泣いちゃ…あぁーん!!」

ピノンを元気付けようとしていたルナまでつられて泣き出してしまいました。

「お、ぉいおぃ…2人とも泣くのかよ…うぅ…うぇーん!!」

ついでにマルコもつられて泣き出しました。

「み、みんな落ち着いて…。」

王子さまらしき人が「ガボ!」と鳴く不思議な生物から降りると3人の子供たちをあやし始めました。

王子さまらしき人は、子供たちの掘りかけの小さな穴の横にガラスケースに入った美しい人に気がつきました。

「この人は…?」

王子さまらしき人は泣いている子供たちそっちのけで、
ガラスケースに入っているナルシア姫に見入ってしまいました。

「毒入りオレンジを食べて死んじゃったんだ!!
だから、だから、ここに埋めてあげようと思って…えぇーん!!」

泣きながらピノンが説明してくれました。

「なんてことだ…。」

王子さまらしき人は、こんな美しい人がこの世にいるなんて(もう死んでるけど)
と大変驚かれました。

子供たちは自分たちがわかっていること全てを王子さまらしき人に話しました。

「ぼくがもう少し早くナルシア姫に出会っていたら…。」
王子さまらしき人は、がっくりとうなだれるとガラスケースを開けて
ナルシア姫にそっとキスしようとしました。

「おぉ!?大胆だな!王子さま!!」

「し〜っ!!マルコ!こういう時は静かにしてるものよ!」

「…そんなルナもちょっとうるさいかも…。」

ギャラリーのことはアウトオブ眼中で、王子さまらしき人はナルシア姫にキスしました。

すると…?

今まで蒼白だったナルシア姫の顔がほんのり色づいたかと思うと、ゆっくりと目を開けたのでした。

「うおぉおおぉ!?ゾンビだっ!!??」
マルコがパニクって叫びました。

ルナが、マルコの口を押さえました。

ピノンは驚いてただポカンと口を開けたままその光景を見つめていました。


「…ここは…?あ、あなたは?」

ナルシア姫が静かに王子さまらしき人に尋ねました。

「ぼくはピエトロと言います、ポポロクロイスの王子です、ナルシア姫。」

王子さまらしき人は、「らしき」ではなく本当に王子さまでした。

事の次第をよくわかっていないナルシア姫にルナが興奮しながら教えてくれました。

「そうだったのですか…ありがとうございます、ピエトロ王子さま。」

ピエトロ王子はナルシア姫を抱きかかえ言いました。

「美しい人、ナルシア姫、ぜひぼくと結婚してください!」

「え!?そ、そんな…わ、私…私なんかで良いのですか?」
ナルシア姫が恥ずかしそうに、ピエトロ王子に聞き返しました。

「いえ、あなたでないとダメなのです。」

ナルシア姫は、ピエトロ王子の言葉に思わず涙がこぼれました。

「…私で良ければ…。」

「ありがとう、ナルシア!」

ピエトロ王子とナルシア姫は恥ずかしそうにしながらも、もう一度(ナルシア姫は覚えてないだろうけど)
キスしました。

「良かったわね、ナルシア姫。」
ルナがにこにこしながら言いました。

「いいな、ナルシア姫、お城ではたくさんうまいもの食べれるんだろうなぁ。」
マルコがうらやましそうに言いました。

「おめでとう!ナルシア姫!」
ピノンが元気に言いました。

ナルシア姫はにっこり微笑んで3人の頭をなでてやりました。

それを見ていたピエトロ王子が言いました。

「そうだ!君たちもポポロクロイスへおいでよ!」

「「「え!?いいの?」」」

「もちろん!君たちがナルシア姫を助けてくれたからぼくは姫と出会えたんだ。
君たちはナルシア姫にとっても大事な人だしね。」

ピエトロ王子がそう言うと、3人は小躍りして喜びました。



こうしてピエトロ王子は、ナルシア姫と3人の子供たちをポポロクロイス国へ連れて帰り
盛大な結婚式を挙げました。

ピエトロ王子とナルシア姫、そして3人の子供たちは末永く幸せに暮らしましたとさ。

















一方、フローネル国のジルバ王妃さまは、あまりにもひどい国政の為に
森の魔女ギルダ軍によって攻め取られ、国を追われてしまいました。

その軍の中に弓使いレオナと、元騎士団長・白騎士がいたとか…。

フローネルの国は焼け野原となりましたが、森の魔女ギルダが一生懸命復興させ
今では緑の生い茂った美しい森になっているということです。

めでたしめでたし…。








「ちょっとー!!なんにもめでたくないわよー!!
なんで私がお姫さまじゃないのよー!!??しかも国を追われてるしーっ!!」

「誰か叫んでいるような気がするでフけど、空耳でフね?」

どこかで誰かが叫んでおりましたが、その言葉は誰にも聞かれることは
なかったようです…。



☆★☆あとがきと言う名の戯言★☆★
パロディポポロ第2弾です。
ヴァナ事件簿の二番煎じになっちゃいますが
書いてて楽しかったです。




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