人魚の恩返し


ポポロクロイスという国に、ピノンと言うとても可愛らしい素直な王子さまが
国中の民に愛されて暮らしておりました。

そんなある日、ピノン王子はパプーと一緒にこっそりとお城を抜け出して海岸へ遊びに出かけてしまいました。
実はよくあることなので、お城のみんなも国王であるピエトロも気がつかないフリをしておりました。

「パプー、今日も抜け出し成功したね。」
そんなことは全く知らないピノン王子はくったくのない笑顔で月の精霊であるパプーにそう言うと
ポポロクロイス海岸の砂浜でゴロンと横になると、うとうとと居眠りしてしまいました。




どれくらい眠ったのでしょう。
ピノン王子は近くで何か叫んでいる声が聞こえて、目を覚ましました。

「どこから聞こえてくるんだろう?行ってみよう、パプー。」



声のする方へ急ぐと、そこに

海の蒼色の髪の人魚がどこかのやんちゃ坊主にいじめられておりました。

「この魚うまいのかな?食ったらオレも魚になるのかな?」

「離してよっ!私は魚じゃないわっ!海の妖精よっ!!」
どうやら人魚ではなく妖精のようですが、見た目は人魚そのものでした。

「うるさい魚だな、よし!面白そうだからオレんちで飼ってみよう!」

「ちょ、ちょっと!?何すんのよ!!そんなことしたら私、砂になっちゃうでしょ!?」

人魚(妖精)が何やら叫んでいるようでしたが、どこかのやんちゃ坊主は無視してその人魚(妖精)を陸にあげようとしていました。

「やめてってばーーーっっ!!」

やんちゃ坊主が今まさにその人魚(妖精)を陸にあげようとしたその時…!!



「やめなよ、嫌がってるじゃないか。」

ピノン王子がやんちゃ坊主の手を止めました。

手を止められたやんちゃ坊主はあからさまに不機嫌な表情でピノン王子に食って掛かりました。

が!!

「ぼくのおやつで良かったらあげるから、そのお魚さん離してあげて。」

「魚違うしっ!!」
人魚(以下、妖精)が叫んでいますが、2人とも無視しました。

「お?こっちのがうまそうだな、よし、いいぞ。
オレさまマルコってんだ、おい魚、悪かったな、じゃあな!」

「だから、魚違うってばっ!!」

やんちゃ坊主は自分のことを「マルコ」だと名乗ると、ピノン王子からおやつを受け取りスキップしながら帰って行きました。





「ありがとう…えっと…?」
妖精が恥ずかしそうにピノン王子にお礼を言いました。

「ぼくピノン、ポポロクロイスの王子なんだ。お魚さんの名前は?」

「魚違うっ!!…もぉ…メンドクサイからいいわ、私はルナテュレース。
もう少しで砂になるところだったわ、ありがとうピノン。」

ルナテュレースはそう言うとにっこり微笑んで、ピノンの頬に軽くキスをしました。

「え、えぇ!?」

驚いたのはピノンでした。

真っ赤になって頬を押さえているピノンを見て、ルナテュレースがくすくすと笑っています。

「うふふ、本当にありがとう、じゃあね。」

そう言い、ルナテュレースは一際高く跳ね上がるとそのまま海へ帰っていきました。











誰かにそのことを話したいピノンでしたが
それを話してしまうと、自分がお城を抜け出したことがバレてしまうのでぐっと我慢しておりました。